不動産コンサルティング 事例

 事例1  S県某企業

事例内容
所有不動産の内、全く利用されていない不動産が4カ所(空家の中古住宅が2ヶ所、:更地が2ヶ所)もあり、固定資産税等のランニングコストが年間約80万円支出しており、放置されていた。

問題点
未利用及び有効活用されていない不動産の所有。
金融機関に対する未交渉。

対策
デューデリジェンス:当社・税理士・弁護士と提携し、資産・負債を総合点検。意思決定:不動産の有効活用
(大別して、自用・賃貸・売却等)の策定
一定決算期における“赤字”の覚悟。
金融機関への協力要請:利益・損失の予定シミュレーションの説明。
金融機関へ複合的な対応の依頼。

結果
財務の健全化。
将来的な業績向上体質に改善。
・中古住宅の2ヶ所は、リフォームを行い賃貸物件とし収益化。
・更地の2ヶ所は、砂利敷き駐車場として近所の企業に一括賃貸し収益化。
・上記収益により、ランニングコストを賄い、且つプラスの収支とした。

今後の課題
時期を見て、高収益に繋がる企画を検討するか、売却計画を策定を行う。

総評
今迄の金融機関の融資姿勢は不動産担保主義で融資が行われて来ました。その為に、不動産を所有していないと融資を受けられないという状況もあり、一時は金融機関の斡旋(?)で不動産の購入を行って(行わされて)いた時代もありました。しかし、バブルの崩壊・最近のリーマンショック以降の不動産価格は20〜30年前と比較して大幅な下落基調です。
特に土地は、税法上の減価償却が無いので購入価格が何時までも貸借対照表上の資産の部に高止まりで計上され続け、万一売却をすると大きな損失が出る為、決算上の大きな汚点となる為、売るに売れない状態が続き、金融機関への金利の支払いの為に所有し続ける羽目になっている企業が非常に多い事に驚きます。
本件も含め、大胆な意思決定が非常に重要になります。

 事例2 N県某企業

問題点 
・財務体質の改善
・損益計算書の明瞭化

対策
・デューデリジェンス:当社・税理士・弁護士と提携し、資産・負債を総合点検。
・企業所有の不動産(本社屋・倉庫)及び借入金を新設した不動産管理会社へ譲渡。
・不動産管理会社からの賃貸借契約の締結。

結果
・キャッシュフローと損益計算書の金額に整合がとれ、財務体質が改善された。
・スピーディーな経営判断が可能になった。
・事業展開の計画が明確化された。

総評
所有している事が必ずしも良いとは言えません。上記の対策の通り、借入金も不動産管理会社に移動した結果、事業会社の財務内容が大きく改善しました。
ご存じの通り、金融機関からの借入れの内、経費として計上できるのは、金利のみで、元金の返済分は利益として税金の対象になります。しかし、賃借している時の賃料は全額経費計上できますので、キャッシュフローと損益計算書の金額がある意味一緒になり、事業運営上、スッキリとした経営体質になり、財務諸表の読み方も単純で、常に手元資金と事業展開の為の投資計画が明確になります。

 事例3 N県 某企業

事例内容
当該案件は地方都市にある老舗の企業で、本社屋と倉庫並びに収益賃貸ビルを所有。昨今の市況等の減退で、仕事の受注量及び売上高も減少し、それに伴い従業員数も一時期の半分以下になっていた。

問題点
・有効活用されていない不動産
本社屋8階建のうち、3フロアを使用。5フロアが空室で未使用。

対策
・デューデリジェンス:当社・税理士・弁護士と提携し、資産・負債を総合点検。
・有効活用されていない不動産の賃貸及び売却、多用途を含めた有効利用の検討。
・金融機関へ賃貸収益物件計画の説明。

結果
・5階建ての収益賃貸ビルの空室2フロアへ本社を移転。
・8階建の本社屋を普通賃貸及び一時使用、短期賃貸で運用し収益アップ。

総評
老舗企業という事もあり、本社ビルの売却及び第3者への賃貸には抵抗感があり、上記の使用状態でしたが、賃貸ビルの2フロアが空き(当社はタイミング良く!と思いました。)現状の人数で有れば、多少狭い感は有りましたが、賃貸ビルへの移転を進言し、社長はじめ役員の方々の賛同も得られ、移転が完了しました。今までは、直接の収益にはあまり寄与していませんでしたが、8階建ビルの有効賃貸面積約400坪を賃貸する事により、現段階では満室ではありませんが、満室時の想定月額賃料は約160万円、年間約1,920万円の収入増になります。当然、固定資産税等他の経費に大きな増額は発生しないので、賃料収入がそのまま増益になる事になります。

 事例4 東京都内 賃貸オーナー

事例内容
個人のオーナーが所有する築15年の木造アパート。複数の不動産会社へ、
入居者の斡旋を依頼しても空室が決まらない。空室率 20〜30%

問題点
・15年前のニーズに合わない設備

対策
・ケーブルテレビとインターネットの導入

結果
・空室率 10%前後に改善。

総評
賃貸物件は、賃料収入から係る経費を差引き、残りの利益を得ることに保有意義があります。
ところが、相続等で昔から保有している賃貸不動産は、この当然の根本意義を忘れてしまい、建物・設備・敷地の維持管理・更新・顧客ニーズ等々に意識を向けず、現状に至り空室に悩むオーナー様がおられます。
結果として、高空室率を解決する為に不動産業者を当てにし、賃料のダンピングを繰り返すだけで、前向きな賃料収益の改善に対応していないオーナー様も少なくありません。
上記の事例は、今の顧客のニーズを全く意識せず、ただ家賃をもらっていただけです。資金的な事情もあり全ての対策案を行うのは不可能でしたので、ニーズの強いケーブルテレビとインターネット(同じ会社で対応してくれます)の導入する事にし、入居者へ導入についての案内を始めましたら、皆さんに大変喜んで頂き、「交通の便が良いので移転したくなかったが、今時、インターネットも出来ないではと、移転を考えていた。」という声が何人かの方からあり、その旨を大家さんに伝え、実質的な費用対効果の考え方等をアドバイスし、今後は賃貸事業としてのオーナー様が中長期計画を立てて賃貸運営する事となりました。
以上のとおり、賃貸不動産の運営を事業と位置付けて対応する必要があります。

 事例5 都内 某建設会社

事例内容
本案件は、某建設会社の社長が、後継者に嫌がる息子を説得し後を継がせた。
当時息子は、1級建築士で設計事務所を主宰していた。

問題点
・後継者なった息子は、建築設計は大好きでも、建設会社の社長業は相反して大嫌いでした。

結果
・破綻

総評
社長の子供が社長に向いているとは限りません。万一、社長業に向いていない人が社長になったら、社員も取引先も悲劇です。社長業は理論ではありません。「人」と「人」のコミュニケーションから成り立つものですし、その家業=業種によっては帝王学を学んだ素晴らしい人財でも、大嫌いな業種ならその力量が発揮されません。
昨今、中小零細の建設会社での社長業の大きな役割は、仕事を取ってくる「営業」です。
人とのコミュニケーションをとる事が苦手な後継者の息子はその事が嫌で、常に設計室で自分の好きな設計業務をこなし、営業は他の社員に任せきり、当然の如く、会社全体は見えなくなり、仕事が少なくなってきていたのは何となく解ってはいましたが、自社の実態も見えず当世の市場縮小も重なり、数年後に、その会社は破綻しました。中小企業においても親族以外で、社内に任せられる人材を育てる事も課題となります。

 事例6

中小企業の事業承継には事例5人的な要素と、財産的要素として会社の株式、所有不動産、名誉及び個人所有の財産等々様々な相続問題が関係します。
相続人が配偶者と子供1人の時は、余り問題にならないのですが、子供が複数人いる時は、遺産分割に伴い事業の継続が不可能になってしまう事があります。
当家に限って、そんな事は起きないと思っている経営者が多く、事前に対応を怠っている会社が非常に多いのも現実です。

一般的には、現経営者が元気な時に事業を手伝っている子供がいて、その他の子供は事業に全く関与していないケースの時、異論を挟む子供は少ないと思います。しかし、親である経営者が他界した後はそんな訳にはいきません。
そう信じたい気持ちは理解できますが、全てとは言いませんが、万一その様な状況になった時、身内の争いはなかなか大変なもので、身内で有れば尚更、解決が困難になります。

その様にならない為にも、事前に遺言書を作成し、個人と法人の関係を明確にして、事業承継を適確かつ迅速に行う必要があります。
相続権は法律で決められており、その部分を除外した遺産分割は出来ませんので、税理士、弁護士等との連携のもと特に分割しにくい不動産については、早めの対応が必須です。

我々の周りには事例が山ほど存在し、他人事で自分の場合には「絶対、有り得ない」 と信じている。又は「信じたい!」だけです。

 事例7:東京都T様 案件

 二次相続の際に子供4人の間で、相続争いが発生した事例です。
対象不動産は、3階建の自宅兼賃貸マンションでした。兄弟は男2人女2人で3人は結婚をしており、女1人は未婚でした。既婚者の二人は当該不動産に居住しており他の2人は別に居を構えておりました。

■争続、裁判による調停
先ず、相続発生時は持分での争いです。お互いの主張については、家族でないと判断できない事が多々ありますので、その事には触れませんが、一人対三人(以後1人をAさん、他の3人をBさん達という)で争いになり裁判所で調停期間約5年を経て本来は一人当たり4分の1の割合25%なのですが、Aさんが約30%を取得し残りをBさん達3人で均等に相続する事になりました。

■争続物件、売却意思の不一致
それから4〜5年がたち、建物の経年変化が著しく、外壁のタイルが所々剥がれ落ちる様になり、危険でもあるので売却をして居住している二人も売却代金を基に他の物件を購入する計画となりました。
ここで又、問題が発生しました。
「売る」・「売らない」で一致せず、途方に暮れた居住しているBさん達の一人から当方に相談がありました。
Aさんにとっては売る必要性が全くなかったのです。建物の老朽化もAさんにとっては問題ではなく、また現段階においてお金も必要性がない状況でした。1年後、ようやく売却する事についてはAさんの了解が得られましたが、自分は自分で不動産業者に依頼し買手を探すからと協調して売却を進める事が出来ませんでした。
その間、さらに約1年半の間、Aさんは弁護士を立て、当方との交渉を全てその弁護士を通して行う事になり、意思の疎通もままならないので余計な時間もかかりました。

■売買代金の配分
それでもようやく買手が現れ、契約の段取りになりましたが、Aさんはその金額では売りたくないと言われ、総額を変更する事は出来ませんので、多少Aさんの取り分に加算をして、取引が終了しました。
以上の様な争いは、余り表立ってはいませんが現実には水面下でかなりの件数になっていると確信して
おります。これは、元々の相続対策が出来ていなかったことが大きな原因です。

 事例8:共有地を分割して一部を売却

■物件概要と依頼内容

対象物件は都内の高級住宅街にある東・南・北の3方道路に接している約150坪(多少変形地)の敷地に、母親が住んでいた母屋と兄妹の一人(Bさん)が土地の使用貸借で、一時相続の前から住居を建築して住んでいた。その後、母親も亡くなり、二次相続が発生し、兄妹4人が共有持分で相続をした。 4人の内、2人が相続税等の支払いもあり自分の持分を売却したい。また、上記Bさんは継続して住み続けたいが、相続分以上の敷地を利用しており、もう一人のAさんは将来子供の為に、自分の持分は東南の角地として残し、売却対象の一部を買い増したいとの希望でした。

■対策

各人の本心を確認する為に、個々人に面談し希望の詳細を上記の位置を前提に、4人の相続税評価額が同額になるように、2通りの分割案を作成する事から着手した。 同時にAさんの買増し額と、Bさんの相続分以上の買増し額も算出し、それぞれの金額案を売主となる兄妹2人と、買主となる2人に提案した。当然第三者に売却する部分の金額も算出し提案した。

■結果

対策の策定提案の結果、多少の修正は致しましたが、4名全員の了承を得て兄妹間の売買契約の締結を行い、第三者に売却する部分も2カ月後には無事、売買契約の締結をし、その1カ月後には所有権の移転登記を行い、売買代金を受領し完了した。

■総評

この度の事例は兄妹4人がそれぞれの配偶者も含め、一人として無理難題を主張したり、誰かを強く非難する様な方々は居りませんでした。当然、個々人との面談の際には、多少の個人主張はありましたが、「争続」に発展するようなものではなく、また、分割の方法も相続税評価額と流通時価の双方の視点から分割案を算出し、提案した金額で第三者への売買も予定通りに勧められたので、大きな問題もなく相談から10か月程で無事完了した。 但し、二次相続の際に共有登記をせず各人の個別所有にしておけば、二重手間も無く、費用も軽減でき、当事例は「争続」に発展しませんでしたが、時間が経過すればするほど、各人の状況の変化が大きく影響してきますので、出来るだけ早い時期に、対応をすべきです。相続の際は大半の方が弁護士・税理士に相談されますが、相続財産の60〜70%は不動産ですので、相続の相談は不動産のプロと各士業の方に依頼される事をお勧めします。